2017年12月13日水曜日

2期 第10回ゼミ

担当教員の相澤です。急に寒くなって風邪が流行る季節になりました。今日は、Rさんと私の二人で新書紹介を行いました。

まず私が、 最近読んだヨーロッパ関連本を三冊紹介しました(新書二冊と文庫本一冊)。まず、一冊目はソポクレス『オイディプス王』(河合祥一郎訳)です。最近光文社古典新訳文庫から新訳が出たので、久しぶりに読み返しました。思想的に解釈するのはもちろん興味深いことですが、物語として何度読んでも面白い!Rさんは未読とのことだったので、ネタバレはせずに、まずはまっさらで読むことを強く薦めました。

二冊目は、宮川裕章『フランス現代史 隠された記憶』(ちくま新書、2017)です。これは、第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして戦後のフランスのある意味暗い歴史を紹介する本でした。とりわけ興味深かったのが第四章「ユダヤ人移送の十字架」です。先日、ゼミでホロコーストについて学びましたが、ナチスドイツ占領下のフランスからも多くのユダヤ人が絶滅収容所へ移送されました。その過程には当然、フランス人も関わっています。あまり表立って論じらることのないフランスにおけるホロコーストの記憶について知ることができる点で、機会があればゼミ生と読みたいと思いました。

 三冊目は、津島佑子『快楽の本棚』(中公新書、2003)です。これは、小説家である著者の、自伝的読書案内です。洋の東西を問わず、名作が、時代背景とその時代を生きた著者の体験とともに紹介されています。有名な作品ばかり(ですが、私は読んだことないものもたくさんありました)なので、学生さんは参考にするとよさそうです。読書案内の裏のテーマとして、日本と西洋の根本的な違いというものが語られている点が興味深かったです。

Rさんは、庄司克宏『欧州連合 統治の論理とゆくえ』 (岩波新書、2007)を紹介してくれました。同書では、EUという国家を超えた統治体がどのような仕組みで成り立っているのか、自由貿易と市場統合というEUの原則が、各国の社会や文化にどのような影響を及ぼすのかといった問題が解説されています。この本は2007年に出版されています。2017年に本書を読むと、10年前の時点で指摘されている市場統合と文化の多様性の対立が噴出しているのが現在なのだと実感しました。

ゼミ生は、毎週、フランスあるいはヨーロッパに関する新書を一冊読んでいます。ゼミも後半にさしかかった今、本を通して、ヨーロッパの歴史、文化、政治システムなど様々な観点から知識を深められていることを感じます。2月に実施するフランスでのゼミ研修で、本で得た知識と実際のフランスの一致と違いを体感してもらうのが楽しみです。

追記:ゼミとは別に、本日学内で行われたトルコの言葉と文化を紹介するミニ講座に二人で出席しました。トルコの基本情報から言葉の構造、そして「世界三大料理」の一つであるトルコ料理の紹介まで、短い時間ながらトルコに行きたくなる情報満載の講座でした。質疑応答では、EU加盟を目指してきたトルコがアジア、あるいは中東を重視する方向へ舵を切りつつある現状についてもお話が出ました。
ヨーロッパ(といっても私が見るのはフランスとドイツくらいですが...)の報道を見ると、日本とは違って、トルコに強い関心が払われていることがわかります。ヨーロッパについて知るとき、現地の人が何に関心を持っているのか、そしてその関心の対象についても同じように目を向ける必要があると感じます。
トルコについて知るだけでなく、トルコを通じて、ヨーロッパについて考える機会となりました。