2017年10月13日金曜日

舞台観劇 『トロイ戦争は起こらない』

 ゼミ生のYです。

 先日、ゼミ終わりに相澤先生とゼミ生二人で新国立劇場にて鈴木亮平さん主演の演劇『トロイ戦争は起こらない』を観劇してきました。私は新国立劇場には初めて行ったのですが、無駄のない洗練された外観に広々としたロビーはとても美しく、質の高い劇場であると感じられて身が引き締まるように思いました。

 『トロイ戦争は起こらない』は、ギリシャ神話においてトロイの国の王子パリスがギリシャの王女エレーヌを誘拐したことから始まるトロイ戦争を舞台に、パリスの兄である主人公エクトールがどうにか戦争を起こさせまいと奔走するフランス近代演劇の不朽の名作です。戦争を避けようとしたが故に結局戦争が起こってしまうという皮肉な話でしたが、戦争というのは双方ともに張り合えるくらいのレベルであるとき、ほんの些細なきっかけから起こるもので、戦争や平和の在り方を根本から考えさせられる戯曲でした。

作者のジャン・ジロドゥは第一次世界大戦をその身で経験しこの作品を書いたわけですが、だからこそ人々の考え方や動きがリアルで、神話という世界観ながら臨場感ある舞台に感じました。少し難しい言葉や言い回しの長台詞が多く、なかなかすぐには理解しづらい部分もありましたが、役者さん方の熱演は痛切に心に響きました。また、重いシナリオである中笑いを起こさせる場面もあり、飽きさせないような工夫がされているのだなと感心しました。特に第二幕ではとてもタイムリーなジョークなども出て、私も思わず笑ってしまいました。

 舞台セットは最初からずっと変わらず、シンプルで無機質な灰色の円形舞台で、役者さんの演技がより際立って見えました。主演を務めた鈴木亮平さんの演技はその逞しい体格も相まってとても迫力があり、熱がこもっていて圧倒されました。加えてギリシャの智将オデュッセウス役の谷田歩さんも強い気迫でくっきりとした存在感があり、終盤のエクトールとオデュッセウスの会話シーンは鮮烈に印象に残っています。

 時代背景や流れをほとんど知らない状態で観たため、後から調べてようやく腑に落ちた場面がいくつかあり、少し予習してから観ると良かったかなと今になって思います。その上でもう一度集中して観たい舞台でした。来月のゼミ終わりにはまたこちらの劇場で『プライムたちの夜』を観劇予定です。アンドロイドは愛するものの代わりになれるのか、人工知能はどこまで人間の愛に介入できるのか・・・今からとても楽しみです。