2014年10月7日火曜日

「三文オペラ」観劇記

9月26日にゼミ生3名と、新国立劇場に演劇「三文オペラ」を見に行きました。参加した高橋さんによる観劇記です。

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大階段を上って劇場へ。
「三文オペラ」の中で僕の印象に残った場面が終盤に二つありました。

一つ目は、メッキースと昔恋人だった娼婦ジェニーが「ソロモン・ソング」を歌う場面です。絞首刑にされるメッキースと重ね合わせるように、ソロモンやクレオパトラ、シーザーなどの過去の英雄の悲劇的な末路をあげていきます。このジェニーこそがメッキースを裏切り、警察に売り渡した張本人なのですが、どこか悲しげなのが気になりました。僕はこの場面を見て、ジェニーは、ただ生活の為にかつての恋人メッキースを売ったのだと思っていました。しかし、「逞しく生きる娼婦」としてジェニーを見ていた自分とは異なり、相澤先生や他のゼミ生は「メッキースのことを好きだからこそジェニーは裏切ったのではないか?」など「メッキースの元恋人」としてジェニーを見ていました。自分とは違う劇の受け取り方や考察が聞けて面白かったです。

二つ目は、最後の場面です。メッキースが絞首台に上り悲劇的な結末を迎えようとする瞬間、これまで度々「客いじり」をしていた乞食の頭・ピーチャムが今度は観客に向かって「せめてオペラのなかくらいでは、法ではなく恩情が通ることをお目にかけましょう」と驚きの台詞を言い放ちます。そしてご都合主義で、ハッピーエンドの、別の結末が始まります。この物語には二つの結末があったのです。あえて二通りの結末を用意したのはどういった意図があるのか、とても気になる終わり方でした。観劇後には、最初の結末によって悲しく感じるわけでもなく、二つ目の大団円では「よかったよかった」ともならない、何か不思議な感覚に襲われました。

今回人生二度目の観劇だったのですが、同じタイトルでも演出家などによって大きく見せ方が変わるようなので、別の機会に今回とはまた違った「三文オペラ」を観に行きたいと思いました。
(高橋)