2014年6月1日日曜日

書評:『アメリカ大統領の権力―変質するリーダーシップ』


砂田一郎『アメリカ大統領の権力―変質するリーダーシップ』、中公新書、2004年

本書は、アメリカの歴史の中で大統領はどうリーダーシップを発揮してきたかを解説している本である。

 アメリカの選挙制度、大統領制という組織についての解説と、アメリカにおける首席補佐官の権力、ホワイトハウス内のオフィスにおける連携などの記述があるので、組織のシステムを理解することかできる。最後に著者自身がアメリカ政治の研究で得た知識、宗教や人種による多文化性などの様々なアメリカの性質を加味した上で、今後の大統領制やリーダーシップのあるべき姿を述べている。

 補佐官によって、組織のあり方、政治的な優先順位の位置づけなどが、政権ごとに変わってしまうという本文の内容から、補佐官の性質によっても国政が大きく変わってしまうことがわかる。この本を読むまでは、大統領の権力は絶対的なものだと思っていたが、実際は、柔軟で場当たり的に構築されていることに驚いた。このように、自分のもっているイメージとは違うアメリカ政府の組織についてを知ることができ、面白い。
(松山)