2014年6月25日水曜日

「十九歳のジェイコブ」観劇記


去る6月20日に、ゼミの課外活動として、新国立劇場に演劇「十九歳のジェイコブ」を見に行きました。参加した川上さんの観劇記です。

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演劇「十九歳のジェイコブ」を観て

―なあ、俺たち何なんだろうな。人間の顔した・・・―
私がいちばん頭から離れなかったセリフである。この作品を鑑賞した後、かなり考えさせられた。
当たり前の話だが、この世の中にはいろんな人間がいる。そのため、格差が生じるのも仕方のないことだろう。適切な表現ではないかもしれないが、ここではわかりやすくするために、人々を社会的地位で「上・下」に分類するとしよう。本作の主人公、ジェイコブは「下」の人間であった。突然どこかに電話をかけるジェイコブ。「こちら側からはすべて見えている。」受話器の向こう側には「上」の人間。そう、下から上は想像することができるし、憧れや、時に憎しみから想像しようとするだろう。しかし、その逆の上から下は想像しようとしない。この一場面を見て、ふと気づかされた。自分がどちらに分類されようとも、想像するなら、自分よりも上しか見ようとしていなかった。それは、目標や向上心、憧れなどからくるもの。僅かな妬みも含まれているのかもしれない。いずれにせよ、私は自分よりも下を見ようとはしなかった。
この作品を観終わって、私の頭の中はクエスチョンマークしか浮かばなかった。まるで、現代アートをみているようだった。しかし、難しい、結局何が言いたかったのかと、私の頭の中はまんまと『十九歳のジェイコブ』に占有されていた。結末が皮肉的であったのせいもあるだろう。
人生二回目の演劇鑑賞であったが、こうして普段は気づかないことにはっと気づかされたり、自分について考えてみたり。これも演劇の魅力のひとつだろう。
                                   (川上)

2014年 第11回ゼミ

教員の相澤です。本日、ブログ担当者を決め忘れていた(すみません...)ので、私が報告します。今日は二人が病欠。学生4人と私とちょっと寂しい授業になりました。

前半は『ヨーロッパ思想入門』の輪読でした。今週は第3部第4章「社会哲学」の後半(川上さん担当)と第五章の「実存の哲学」前半(秋葉さん担当)を読み終えました。うまくいけば来週には読み終えられそうです。

後半は読書報告。

郷野:『物語 ストラスブールの歴史 - 国家の辺境、ヨーロッパの中核』、中公新書、2009年
川上:三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』、岩波ジュニア新書、2013年
相澤:駒崎弘樹『「社会を変える」を仕事にする:社会起業家という生き方』、 ちくま文庫、2011年


最初の頃に比べると、みんな読書報告に慣れてきた気がします。例えば、各自が持参した本をチラ見すると、付箋がたくさん貼付けられて、読書の技術が上がっているのが見て取れます。読書って、慣れれば効率よく進められるもの。この調子でがんばっていきましょう。
(相澤伸依)

2014年6月19日木曜日

2014年 第10回ゼミ

こんにちは!ゼミ生の山本です。
昨日のゼミの報告をさせていただきます。

前半は、いつもとは気分を変えて読書報告からでした。

山本:奥村宏『判断力』、岩波新書、2004年
秋葉:佐々木隆『言霊とは何か』、中公新書、2013年
郷野:加藤文元『物語 数学の歴史』、中公新書、2009年
高橋:釘原直樹『人はなぜ集団になると怠けるのか』、中公新書、2013年

後半は『ヨーロッパ思想入門』の輪読でした。今週は第3部第3章の「経験主義の系譜」と第3部第4章の「社会哲学」の前半まででした。レジュメ担当の川上さん、松山くんお疲れ様です!

『ヨーロッパ思想入門』の輪読ももうそろそろ終わりですね。
あと少しがんばっていきましょう!
この輪読が終わったら読書会形式でやるようです。

そして、金曜日には第二回の演劇鑑賞があります。
今回は「19歳のジェイコブ」を見に行きます。
僕は演劇を見に行くというのは初めてなので楽しみです。

2014年6月18日水曜日

書評:『友情を疑う』

清水真木『友情を疑う』、中公新書、2005年

本書は、哲学史における様々な友情論を紹介し、友人や友情に対して期待されてきた役割や価値を考えるものである。

私たちが手にする友人や友情に関する本は、その著者が自分の経験を基にして“上手く人と付き合う方法”を説くハウツーものが多いのではないだろうか。しかし、本書はそのような実践書の類ではない。友人や友情の意味を明らかにしようとした哲学者たちの遺した言葉を辿り、そもそも「友人」と呼ぶ人はどのような条件を満たしているかを論じる。人付き合いのハウツー本を多く読んできた人には新鮮に感じる内容であろう。

本書では、主に6人(アリストテレス、キケロ、モンテーニュ、シャフツベリ、ルソー、カント)の哲学者の思想が紹介されている。哲学は難しいというイメージを持っている人は、第1章や2章の内容は当時の社会状況の違いから理解しにくいかもしれない。だが、3章からは、私たちが体験したことがあるような具体例が多用されるので、とてもわかりやすい。自分の経験に引きつけながら、哲学者の考えに共感や批判といった自分なりの意見を持つことができるだろう。読後、「哲学はやはり難しく、全く理解できない」と感じる人は少ないはずである。哲学の面白さが伝わる一冊だ。
(秋葉)

2014年6月16日月曜日

「テンペスト」観劇記


去る5/23に、ゼミの課外活動として、新国立劇場にて演劇「テンペスト」を鑑賞しました。参加ゼミ生による観劇記です。

「演出に魅せられて」
積み立てては崩していくという段ボール箱を使用した演出は新鮮であった。積み上げられたものを崩すというのは、何かの崩壊がイメージさせられる。しかし、積み上げた段ボール箱を崩すことへの役者の勢いと清さに心地よさを感じた。
演劇の始まり。それは、舞台の上に何か映し出されることから始まった。そのものへの興味が、私の目を舞台へと静かに導く。物語が進んでいくと同時に、会場の空気が一体になるのを感じた。息をのむ張りつめた瞬間、華やかな演出に心躍る瞬間など、会場に流れる空気は状況に応じて変化した。それを肌で感じた瞬間に気持ちが高ぶった。その時、実際にその場所にいる、という価値を理解した。
スポーツやオーケストラの演奏は見ようと思えば、画面を通して見ることができる。私は今まで、画面でそれらを見れば全体がよく見渡せるので、実際に会場に行くより良いのではないかと思っていた。しかし、劇場で観劇してみて、それは違うのだと感じた。
今回は、段ボール箱での演出が特徴的であったが、その他の演劇はどのような演出なのかも気になる。機会があれば、違う作品を観劇し違いを楽しみたいと思う。


(秋葉)

2014年6月12日木曜日

2014年第9回ゼミ

おはようございます。ゼミ生の松山です。
1日遅れではありますが、ゼミの活動報告をさせていただきます!
雨が降る中、無事に全員出席!

今週は『ヨーロッパ思想入門』の第3部・第2章「理性主義の系譜」の輪読を行いました。
レジュメを作ってくれた秋葉さん、お疲れ様でした。
授業前に読んできたものの、理解するのが難しく、ゼミの授業の中でも頭がパンクしそうになっていました...。
ほかのゼミ生はどうだったのでしょうか?難しく感じたのは自分だけですか?

そのあとは、恒例の読書報告です。
山本君は『ホンネで動かす組織論』、太田肇、ちくま新書、2004年
高橋君は『ドイツ傭兵の文化史』、ラインハルト・バウマン、菊池良生訳、新評論、2002年
郷野君は『JAL再建の真実』、町田徹、講談社現代新書、2012年
短い時間での発表でしたが、どういう内容なのかがしっかりわかる発表だったと思います。
3人とも、ありがとうございました。

来週の輪読は、川上さんが担当の第3章と自分と川上さんの担当する第4章です。
川上さんは大忙しになりそうですね...。
自分も少しでも皆さんの理解が深まるようなレジュメを作っていきたいと思います。

来週も全員集合で頑張りましょう!!!!!







2014年6月4日水曜日

2014年度第8回ゼミ

こんにちは!ゼミ生の川上です。
夏が近づき、暑くなってきましたね。しかし、暑さに負けず、本日の相澤ゼミは全員集合です!!

今週のゼミ活動
まずは、引き続き『ヨーロッパ思想入門』の輪読。高橋さんが第2部第5,6章、山本さんが第3部第1章の要約を発表し、理解を深めました。
今回のゼミで第2部「ヘブライの信仰」を終え、第3部「ヨーロッパ哲学のあゆみ」へと入りました。

そして、「今週読んだ本」は以下のとおりです。
松山:深谷昌志『父親-100の生き方』、中公新書、2008年
郷野:高野秀行『謎の独立国家ソマリランド』、本の雑誌社、2013年
秋葉:小谷野敦『友達がいないということ』、ちくまプリマー新書、2011年
川上:四方田犬彦『「かわいい」論』、ちくま新書、2006年

輪読の際、相澤先生から西洋宗教を学ぶことで西洋絵画の理解が深まると聞きました。まったくその通りだと思います。何も知らなければ、「この人馬から落ちてる〜」で終わるところが、知識があれば「これは、パウロの回心だ!輝く天からの光に撃たれて盲目になり...」と感じられるものが格段に増えますよね!
これは、絵画だけでなく、演劇にも言えることではないですか!?ということで、ゼミ生のみなさん、みんなで演劇行きましょうよ!!
(川上)

(*相澤注:先日、ゼミ生有志でシェイクスピアの演劇「テンペスト」を見に行ったのです。その感想は近々アップします。)

2014年6月1日日曜日

書評:『アメリカ大統領の権力―変質するリーダーシップ』


砂田一郎『アメリカ大統領の権力―変質するリーダーシップ』、中公新書、2004年

本書は、アメリカの歴史の中で大統領はどうリーダーシップを発揮してきたかを解説している本である。

 アメリカの選挙制度、大統領制という組織についての解説と、アメリカにおける首席補佐官の権力、ホワイトハウス内のオフィスにおける連携などの記述があるので、組織のシステムを理解することかできる。最後に著者自身がアメリカ政治の研究で得た知識、宗教や人種による多文化性などの様々なアメリカの性質を加味した上で、今後の大統領制やリーダーシップのあるべき姿を述べている。

 補佐官によって、組織のあり方、政治的な優先順位の位置づけなどが、政権ごとに変わってしまうという本文の内容から、補佐官の性質によっても国政が大きく変わってしまうことがわかる。この本を読むまでは、大統領の権力は絶対的なものだと思っていたが、実際は、柔軟で場当たり的に構築されていることに驚いた。このように、自分のもっているイメージとは違うアメリカ政府の組織についてを知ることができ、面白い。
(松山)