2014年5月23日金曜日

書評:『「リスク」の食べ方―食の安全・安心を考える』

岩田健太郎『「リスク」の食べ方―食の安全・安心を考える』ちくま新書、2012
 
本書は様々な事例の検討を通して、食に対する「リスク」や「安全・安心」の在り方を問い直す。
 
感染症の専門医である著者は、ユッケによる大腸菌感染症から厚労省がレバ刺し禁止に至るまでの背景を考察している。そしてレバ刺しの禁止は私たちの役所依存体質を高め、逆説的に他の食品の安全リスクを高めることになると主張している。後半では、トクホの実態、健康増進を謳う本の検証、放射能が食べ物にもたらす影響などに触れ、最後に原発再稼働のリスクについて食べ物の枠を超えて言及している。
 
どんな食べ物でも(たとえ薬であっても)二面性、リスクがあることを承知の上でそれに対峙していかなければならないこと、そして「安心」の過度な追求が実は「安全」を壊してしまうことを意識するきっかけになる一冊だ。
(郷野)